ご挨拶

社会調査協会は、大学等の高等教育機関における社会調査に関する教育水準の向上、研究者と実務者における社会調査の方法と社会調査を用いた研究の発展、世の中で実践されている社会調査の質の維持向上、そして社会調査の意義に関する人びとの理解の拡大普及をめざして活動しています。

複雑な現代社会の日々の運行にとって、社会調査は公共的な価値を有する社会インフラとして極めて重要な役割を担っています。たとえば、民主的な政治システムの健全な発展には、人びとの政治意識や世論の動向を把握してそれを政治的な討議に活用するための世論調査が欠かせません。あるいはあまり知られていませんが、GDPを初めとするさまざまな経済統計の作成においては企業活動からのデータだけではなく、社会調査を通じての世帯や個人からも基盤となるデータが収集されています。そして、社会保障や子育て支援などの政策や制度の構築にとっては、国勢調査を中心とする人口や家族構成に関するデータのほか、人びとの暮らし方や意識についての詳細な調査データを活用しなければなりません。

学術的なレベルでは、このほかにもさまざまな社会調査が研究を支えており、研究を通じて社会に貢献しています。たとえば、病院や介護施設における患者、看護師、介護士、医師などの行動や発話、コミュニケーションのしかたを長期にわたり丁寧に観測することによって、そうした現場でどのような問題がどのように存在しているかを明らかにするというような、社会調査を重要な方法とする学術研究がありますが、そうした研究成果は医療や介護のしくみの改善に関する検討において活かされていくことになります。

社会調査協会は、このように公共的な意義を有している社会調査という社会実践を支えて発展させるために各種の活動を展開しています。なかでもその中核にあるのが社会調査士および専門社会調査士資格の認定です。これは全国の大学において開講されている質の高い社会調査の授業を社会調査協会が認定し、それを学生や院生の皆さんが履修するというしくみからなっています。これ以外にも、社会調査に関わる専門家のためのフォーラムとしての機関誌『社会と調査』の発行、講習会やセミナーの開催、専門的研究者を主たる対象とする研究会の開催、あるいは社会調査に基づく研究等への表彰などの事業を行っています。

本協会の前身である「社会調査士資格認定機構」によって資格認定事業が始まってからほぼ13年になります。この間、社会調査に関わる数多くの専門家、研究機関、学会、企業、団体等のご支援とご協力を得て、24,000名を超える社会調査士と2,700名を超える専門社会調査士を認定し、多くの実績を積み上げてきました。それによって、社会インフラとしての社会調査の基盤の充実に寄与することができたのではないかと自負しております。

今日、社会調査の重要性はますます高まっています。その一方で、質の高い調査を実施する上での困難も増しており、社会調査協会が果たすべき役割はますます大きなものになってきています。とくに社会調査の公共的意義についての啓蒙や調査インフラの改善などは、協会として力を入れて取り組むべき重要な課題の一つと考えています。社会調査協会はこれからも社会調査および社会調査教育のさらなる発展のためさまざまな活動を展開し、期待に応えていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

2016年6月

盛山和夫(東京大学名誉教授)